〈聖書からのお話し〉
 
「弱いときこそ、強いとは?」

牧師 三 ヶ 嶋 徹
 
 弁慶の泣き所と言えばむこうずね、ギリシャ神話のアキレスの弱みは腱、つまりアキレス腱だと言われています。洋の東西を問わず、共通して足に弱点があったというのも偶然でしょうか。非常に面白いですね。またそれは英雄豪傑といえども、どこかに弱点を持っているものだという例なのかも知れませんね。

 ふつう私たちは、どうであろうと弱いよりは強い方が良いし、弱点なんかはない方が良いと考えているでしょう。しかし聖書には、

 「喜んで自分の弱さを誇る」
        (新約聖書・コリントの信徒への手紙二12:9)


と言った人がいます。これは、キリスト教の史上最大の伝道者パウロと言う人の言葉です。この人は、もともとイエス・キリストを信じていた人たちを迫害していた、熱心なユダヤ教徒でした。ところが、ある日復活されたイエス様に出会って、三日間目が見えなくなります。ところが、イエス様は、この人こそ、

 「キリスト教の伝道者として、苦しみを担う者となる」
          (新約聖書・使徒言行録9:15、16より)


との計画を持って、アナニアと言う弟子を通して、パウロの目を開かれます。その時、

 「目からうろこのようなものが落ちた」
               (新約聖書・使徒言行録9:18)

と聖書にあります。ここから「目からうろこ」と言う言葉が出来たと言われています。なにはともあれ、不思議な神体験を持っているのがパウロと言う人です。

 後にパウロは、イエス様の語られたとおり、大変な苦労しながら伝道をしていきます。

 「苦労したことはずっと多く、投獄されたこともずっと多く、鞭打たれたことは比較できないほど多く、死ぬような目に遭ったことも度々でした。ユダヤ人から四十に一つ足りない鞭を受けたことが五度。鞭で打たれたことが三度、石を投げつけられたことが一度、難船したことが三度。一昼夜海上に漂ったこともありました。しばしば旅をし、川の難、盗賊の難、同胞からの難、異邦人からの難、町での難、荒れ野での難、海上の難、偽の兄弟たちからの難に遭い、苦労し、骨折って、しばしば眠らずに過ごし、飢え渇き、しばしば食べずにおり、寒さに凍え、裸でいたこともありました。このほかにもまだあるが」
  (新約聖書・コリントの信徒への手紙二11:23b~28a)


と語っています。その中で、さすがのパウロも弱り果てます。しかし、彼によれば、弱さは恥ずかしいことではなく、むしろ誇りであるとさえ言うのです。それは一体どういう意味なのでしょうか。

 もしも、何の弱点も欠点もない人間が本当にいたとしたらどうでしょうか。その人は、他の人の弱さや痛みを思いやることの出来ない冷血漢のような人間かも知れません。弱さや痛みを知っていればこそ、人間は、同じ弱点や欠点を持つお互いを理解し思いやることが出来る人になれる、というものではないでしょうか。ですから、弱さを持っていることは悪いことではなくて、むしろ他の人の為にはそれが支えとなるのです。ただし、そのために大切なことは、自分の弱さを弱さとして率直に認める勇気を持つことです。謙虚さや向上心は、本当は自分の弱さを率直に認めることから生まれるものだろうと思います。パウロはまたこうも言います。

 「『力は弱さの中でこそ十分に発揮されるのだ』と言われました。だから、キリストの力がわたしの内に宿るように、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう。」
        (新約聖書・コリントの信徒への手紙二12:9)


 自らの弱さを知れば知るほど、人はイエス様に近づき、イエス様の助けを真剣に求めるようになり、そのことによって神様から十分な赦しと癒しと、そして力とを受けることが出来る。このことを彼は知っていたに違いありません。

 キリスト教における信仰生活は、ただ単に日曜日に教会に行って神様を礼拝するだけではありません。ましてや、心の中だけでそっと神様に赦しと助けを求めるだけのものでもありません。聖書は、礼拝がその人の新しい1週間の始まりであると教え、イエス・キリストと共に具体的に歩み、生きることだと教えます。たとえ自らが小さく罪多き者であっても、それを赦すためにご自分を十字架につけてまで私を愛したイエス様が私を赦し生かして下さっている、ということを、具体的に起こってくる色々なことを通して体験していくのです。また、こんな私をパウロのように用いて下さるということを経験していくのです。不思議ですが、自分の弱さがイエス様の力の働かれる場として用いられていることを実感出来るのです。一度松阪ルーテル教会に足を運んでください。教会員一同心からお待ちしています。



《 バックナンバー 》
Copyright (C) 2004 Matsusaka Lutheran Church, All Rights Reserved.