〈聖書からのお話し〉

牧師 屼ノ下照光 
 
 「永遠の命とは、唯一のまことの神であられるあなたと、あなたのお遣わしになったイエス・キリストを知ることです」
                   (ヨハネによる福音書17章3節)

 先月(4月)、教会では、イエス・キリストの十字架を偲び、復活をお祝いしました。神の独り子イエス・キリストの十字架の苦しみと死からの復活は、私たち人類のための救いのためであったと聖書は語っています。ヨハネによる福音書では、「救い」と「永遠の命」というのは、同じ意味で語られています。それは、罪赦され、神さまと共にある人生、死のかなたにおいても神さまと共にある命であるということができると思います。この「永遠の命」についてイエスさまは、「永遠の命とは、唯一のまことの神であられるあなたと、あなたのお遣わしになったイエス・キリストを知ることです」。と語っておられます。

 唯一の神とその独り子であるイエス・キリストを知るとは、どういうことでしょうか。私たちは神さまとか、イエス・キリストを知っているのでしょうか。どれくらい知っているのでしょうか。どれくらい知っていたら、永遠の命を得ることができるのでしょうか。そう考えますと、ほんとうによく分かりません。  若い人たちはご存じないと思いますが、漫画『のらくろ』の作者として有名な田河水泡さんは、クリスチャンでした。戦後、彼のもとに『サザエさん』の作者、長谷川町子さんが弟子入りしました。長谷川さんはお母さんとともにクリスチャンであったため、田河さんは、長谷川さんに誘われて、奥さまの高見澤潤子さんとともに教会に通うようになりました。潤子さんは早くに洗礼を受けられたようですが、田河水泡さんは、なかなか洗礼を受けようとされませんでした。あるとき、牧師が、洗礼を受けるように勧めたところ、田河さんは、「どうも、神さまのことがよく分からない」と言われました。すると、牧師が、「神さまですから、私もよく分かりません。だから、信じています」と言われたそうです。すると、田河さんは、洗礼を受ける決心をされたとのことです。

 神さまを知る、イエス・キリストを知るとは、どういうことでしょうか。私も、「神さまのことをどれだけ知っていますか」と尋ねられたら、「ごめんなさい。何も知りません、何も分かっていません」と言うしかありません。ガラテヤの信徒の手紙の中で、パウロがこのように語っています(4章8~9節)。「ところで、あなたがたはかつて、神を知らずに、もともと神でない神々に奴隷として仕えていました。しかし、今は神を知っている、いや、むしろ神から知られているのに、なぜ、あの無力で頼りにならない支配する諸霊のもとに逆戻りし、もう一度改めて奴隷として仕えようとしているのですか」。

 イエス・キリストの十字架による救いという福音を聞いて、喜んで信仰に導きいれられたのに、惑わされて、その恵みから離れて行ったガラテヤの教会の人々に対して、パウロは、真の福音に立ち返るように勧めています。「今は神を知っている、いや、むしろ神から知られている」とパウロは語っています。聖書を通して、そして、イエス・キリストとの出会いによって、私たちは確かに、イエス・キリストがどういう方であるかを知ることができますが、そんなことは、大切なことではありません。むしろ、私たちが、神さまに、イエス・キリストに知られているのであり、キリストに包み込まれているのです。そのことを、信じ受け取ることが、神を知り、イエス・キリストを知るということなのだろうと思います。

 フィリピの信徒への手紙3章12節でパウロは、「わたしは、既にそれを得たというわけではなく、既に完全な者となっているわけでもありません。何とかして捕えようと努めているのです。自分がキリスト・イエスに捕えられているからです」と語っています。カトリック教会の本田哲郎神父は、このところをこんなふうに訳しておられます。「わたしは、すでにそれを得たわけでも、自分がもう完成されたわけでもありません。何とかしてそれをつかみとろうとしてがんばっているところです。そのためにこそ、わたしはキリスト・イエスにしっかりと抱きとめられているのです」。「キリスト・イエスにしっかりと抱きとめられているのです」という表現に私は深い感動をおぼえます。神さまに、イエス・キリストに知られている私たちは、イエス・キリストにしっかりと抱きとめられているのです。イエス・キリストの十字架と復活が、そのことの確かなしるしです。「永遠の命」とは、神の独り子、私たちのために十字架を負ってくださったイエス・キリストにしっかりと知られ、抱きとめられているということなのです。

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